発端は、ある抽選会だった
会社のイベントでの抽選会。よくある話である。
数々の豪華賞品が並び次々と当選者が決まっていく中、私は何も当たらず早々に「まあ当たらないよね」などと自己防衛の保険をかけていた。
ところが、である。
ラスト1つの大トリ賞品に私は当選した。
どうせ当たらないと思いつつ、「当たったらどのようなリアクションをとると盛り上がるだろうか」などとも皮算用していたのだがこの事前準備のおかげで私は最適なリアクションをとれたと思う。とれたに違いない。
斯くして、私はキャンプ用テントを手に入れた。
サイズはcm表記もあるが図では大人二人と子供二人が入る大きさであると書かれていた。私は早速、友人二人を誘いキャンプの計画を立てた。
秋が残暑の様子をうかがい始めていた。
湖岸を横目に走り抜け、メタセコイアの並木道を越えた先――マキノ高原キャンプ場に僕たち3人はテントを張った。林間の、気持ちの良い木陰のエリアだった。
ロッジでもなく常設テントでもない、自前のテントでのキャンプは初めてだ。
テント設営と並行して火起こしも行う。キャンプといえば火である。料理のために火が必要だし、火が無ければ眺めるものがない。
午後のぬるい風が木漏れ日を裏返していった。
――「このテント3人は狭くね?」「あー、やっぱり?」
BBQの準備はできていた。